大学生の健康意識と健康・医療情報の入手

 大学生の健康に関する意識・行動とそのための情報入手との関連を明らかにするため,1年生を対象とした質問紙調査を実施した.調査は健康に関する意識・習慣に関する8つの質問とメディアとの接触に関する5つの質問,健康・医療情報との接触に関する4つの質問から構成した.
 大学生は一人暮らしということもあって,自己の健康状態に対して健康でないと感じる比率がやや高く,健康維持についても気をつけていないとする比率が高い(図1).
 調査直前の1ヶ月間に健康情報に接して影響を受ける(行動・習慣が変わったり,情報を探したりする)ことがあった人の割合は59.5%であった.その情報源はテレビを筆頭に,インターネット,雑誌,友人と続き,1人あたり平均2.2種類の情報源から影響を受けている.これに対し,医療情報に接して影響を受けた人の割合は42.1%とやや少ない.また62.5%の人が単一の情報源からのみ影響を受けている.テレビ,インターネットが多いことは変わらないものの,雑誌・本・新聞といった活字メディアの影響が小さくなった(図2).
 1ヶ月の間に健康情報・医療情報を積極的に探索したことのある人の割合は,それぞれ46.0%,43.0%であった.受動的な接触時と異なり,能動的な探索には専らインターネットが使用されており,半数以上がインターネットだけを使用し,1/4がインターネットと他の情報源を併用,残る2割前後がインターネット以外の情報源だけを使用している(表1).
 健康状態やその改善意欲等は健康情報・医療情報との接触に影響を及ぼしていない.ただ,健康について「気をつけている」人たちは,実際にどのように健康を維持しようとしているかとは無関係に,「気をつけていない」人たちよりも,健康情報を探索する傾向がある.
 医療情報の探索において複数の情報源を使用する人は,インターネット使用時間が長い人たちに多い.またインターネット使用時間が短い人はインターネット以外の単一の情報源を使用する割合が相対的に高い(図3).健康情報の探索に関しても同様の傾向が観察されるが,統計的には有意ではない.インターネット利用のスキルが高い人は,問題に応じてインターネットに加えて,インターネット以外の情報源を併用すると言えよう.
 インターネットを使うことが普通になった世代において,健康情報や医療情報へのアクセスが,受動的にはテレビとインターネットを軸に,活字メディアや友人・家族を含む多様な形で達成されながら,能動的には専らインターネットによって行われていること.日常的にインターネット使用時間が長く,インターネット利用に習熟している層では,インターネットとその他の情報源を併用した,より慎重な探索が行われる傾向があることを本研究は示した.

図1 健康維持に関する意識と行動(N=119)

図2 影響を受けた健康・医療情報の情報源(N=69, 48)

表1 健康・医療情報探索時の情報源

  健康情報 医療情報
インターネット単独 30 57.7% 26 53.1%
インターネットを含む複数 13 25.0% 12 24.5%
インターネット以外の単独 7 13.5% 9 18.4%
インターネットを含まない複数 2 3.8% 2 4.1%
合計 52   49  

図3 インターネット使用時間と医療情報探索の情報源